「犬には塩分を与えてはいけない」と聞いたことはありませんか?人間の食べ物は塩分が多いため、犬に与えすぎないよう注意することは大切です。しかし、犬にとって塩分がまったく必要ないわけではありません。
塩に含まれるナトリウムや塩化物は、犬の体を正常に保つために必要なミネラルです。
一方、普段から総合栄養食のドッグフードを食べている犬の場合、必要なナトリウムなどはフードから摂取できるため、飼い主が食事に塩を追加する必要は基本的にありません。
この記事では、
について解説します。
犬にも塩分は必要
「犬に塩分は必要ない」と考えられることがありますが、正確ではありません。
犬に必要なのは、食塩そのものというより、食塩を構成しているナトリウムや塩化物などのミネラルです。
ナトリウムは犬の体内で、
- 体液のバランスを保つ
- 神経の情報伝達に関わる
- 筋肉の働きを支える
などの役割を担っています。
そのため、ナトリウムは犬にとって必要な栄養素のひとつです。
FEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)の2025年版栄養ガイドラインでも、成犬用の完全食に必要な栄養素としてナトリウムと塩化物が設定されています。
つまり、
「犬に塩分は必要ない」のではなく、「必要量は食事から摂取する必要があるが、余分な塩を加える必要はない」
と考えると分かりやすいでしょう。
「塩分」と「ナトリウム」は同じもの?
塩分について考えるときに知っておきたいのが、「ナトリウム」と「食塩相当量」の違いです。一般的な食塩(塩化ナトリウム)は、ナトリウムと塩化物からできています。
食品に含まれるナトリウム量から食塩相当量を計算する場合、おおよそ次の式が使われます。
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×約2.54
例えば、ナトリウム100mgは0.1gなので、
0.1 × 2.54 = 約0.254g
食塩相当量では約0.25gとなります。
そのため、「ナトリウム100mg」と「食塩100mg」は同じ意味ではありません。
犬が1日に必要とする塩分量は?
犬の必要量を考える場合、「体重○kgなら塩○g」と単純に決めることはできません。
体格だけでなく、摂取カロリーやライフステージなどによっても変わるためです。
FEDIAF 2025では、成犬の維持期におけるナトリウムの最低推奨量として、代謝体重(体重kgの0.75乗)1kgあたりナトリウム0.03g(30mg)/日という値が示されています。
これを食塩相当量に換算すると、おおよその目安は次のようになります。
| 犬の体重 | ナトリウム最低推奨量の目安 | 食塩相当量 |
|---|---|---|
| 3kg | 約68mg | 約0.17g |
| 5kg | 約100mg | 約0.25g |
| 10kg | 約169mg | 約0.43g |
| 20kg | 約284mg | 約0.72g |
| 30kg | 約385mg | 約0.98g |
※FEDIAF 2025の成犬維持期の最低推奨量「ナトリウム0.03g/kg BW^0.75/日」から計算した参考値です。これは「この量の食塩を直接与える」という意味ではありません。
また、基準によって計算方法や前提条件が異なります。
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、AAFCOの基準とエネルギー要求量をもとに、体重5kgの避妊・去勢済みの犬の1日の塩分摂取量の目安を0.18gとしています。
このように「犬の塩分は1日○g」とひとつの数字だけで説明するのではなく、基準や食事量によって異なることを理解しておきましょう。
ドッグフードにも塩分は入っている
ドッグフードの原材料を見ると「食塩」と書かれていない商品もあります。
しかし、
「食塩と表示されていない=ナトリウムが入っていない」という意味ではありません。肉や魚、野菜などの食材そのものにもナトリウムが含まれています。さらに、総合栄養食は犬が必要とする栄養素を摂取できるように設計されています。
日本のペットフード公正取引協議会では「総合栄養食」を、そのフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるよう栄養バランスが調整されたものとしています。総合栄養食の基準はAAFCOの基準をもとにしています。
そのため、健康な犬が適切な量の総合栄養食を食べているのであれば、通常は飼い主が別途塩を追加する必要はありません。
ドッグフードにはどのくらい塩分が含まれている?
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、参考値としてドライタイプのドッグフード10gあたりの食塩量を0.018gとしています。
単純換算すると、
| ドライフード | 食塩量の参考値 |
|---|---|
| 10g | 約0.018g |
| 50g | 約0.09g |
| 100g | 約0.18g |
| 150g | 約0.27g |
| 200g | 約0.36g |
となります。
ただし、これはすべてのドッグフードに当てはまる数値ではありません。実際のナトリウム含有量は商品や原材料、目的によって異なります。
肉にも自然にナトリウムが含まれている
塩を振っていない生肉にもナトリウムは含まれています。
例えば文部科学省の食品成分データベースでは、若鶏のむね肉(皮なし・生)100gにナトリウム45mgが含まれています。食塩相当量は約0.1gです。
つまり、
「塩を加えていない食材=塩分ゼロ」ではありません。
肉そのものからもナトリウムを摂取しています。
食品によって含有量は異なりますが、参考例としては次のようになります。
| 食材(生・100g) | ナトリウム量の例 | 食塩相当量の目安 |
|---|---|---|
| 鶏むね肉(皮なし) | 約45mg | 約0.1g |
| 牛肉(部位の一例) | 約52〜73mg | 約0.13〜0.19g |
| にんじん | 約69mg | 約0.18g |
鶏肉については文部科学省、牛肉・にんじんについてはUSDA FoodData Central由来のデータを参考にしています。肉は部位などによって数値が変わります。
野菜にもナトリウムは含まれている
ナトリウムは肉や魚だけに含まれているわけではありません。野菜にも少量ながら自然に含まれています。
例えば、にんじん100gにはUSDA FoodData Central由来のデータで約69mgのナトリウムが含まれています。そのため手作り食の場合も、肉・魚・野菜など複数の食材からナトリウムを摂取することになります。
ただし、「食材にナトリウムが含まれているから、適当に組み合わせれば犬に必要な量を満たせる」とは限りません。
手作り食ではナトリウムだけでなく、カルシウム、リン、亜鉛、銅、ヨウ素、ビタミン類なども含めて栄養バランスを考える必要があります。
犬の手作りごはんには塩を入れたほうがいい?
我が家のように完全手作り食で、おやつも素材のみの無添加食材などを与えている場合、肉などの食材だけではナトリウムが足りないことがあります。
体重5kgの小型犬なら、1日にほんの少し(指先で軽くつまむ程度、約0.1g〜0.2gの塩)を加えます。
肉や野菜を加熱してもナトリウムは分解されませんが、肉や野菜を茹でると、食材中のナトリウムの一部が茹で汁へ溶け出します。その茹で汁を捨てれば、食材として摂取するナトリウム量は減る可能性があります。
完全手作り食にする場合には、愛犬の尿の色や量、飲水の量についても日々気をつけてあげる必要があります。
注意したいのは「人間用に味付けされた食品」
犬の塩分で特に注意したいのが、人間用に加工・調理された食品です。
環境省のガイドラインでは、10gあたりの食塩量の例として、
| 食品 | 10gあたりの食塩量 |
|---|---|
| 食パン | 0.13g |
| ロースハム | 0.25g |
| ウインナー | 0.19g |
| プロセスチーズ | 0.28g |
| ベーコン | 0.20g |
| かつおぶし | 0.24g |
| しらす干し | 0.54g |
| はんぺん | 0.15g |
| 塩鮭 | 0.18g |
などが紹介されています。
比較すると、ドライタイプのドッグフード10gの参考値は食塩0.018gです。例えばプロセスチーズ10gなら約0.28gで、同資料に掲載されたドライフードの参考値と比べるとかなり多くなります。
「ほんの一口だから大丈夫」と考えて人間用の加工食品を頻繁に与えていると、食事全体の塩分量が増えてしまう可能性があります。
犬に塩をまったく与えないほうがいいわけではない
犬と塩について大切なのは、「塩分=悪いもの」と考えないことです。ナトリウムは犬が生きていくうえで必要なミネラルです。
問題になるのは「必要な栄養素として摂取すること」と「人間用の味付けや加工食品などから余分に摂取すること」を混同してしまうことです。
健康な犬が総合栄養食を適量食べている場合、基本的にはフードから必要な栄養素を摂取できます。
まとめ|犬にも塩分は必要。ただし「塩を足す」必要は基本的にない
犬にもナトリウムや塩化物は必要です。そのため、「犬には塩分が一切必要ない」という考え方は正確ではありません。
一方で、肉や魚、野菜などの食材にもナトリウムは自然に含まれており、総合栄養食のドッグフードは必要な栄養素を摂取できるように作られています。健康な犬が総合栄養食を適量食べている場合、飼い主が塩を追加する必要は基本的にありません。
むしろ注意したいのは、ハム、ソーセージ、チーズ、パン、練り物など、人間用に味付け・加工された食品を日常的に与えることです。
犬にも塩分は必要。でも、人間と同じように味付けする必要はない。
これが犬の塩分を考えるうえでの大切なポイントです。
なお、肉にはナトリウムだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素が含まれています。
犬に与える肉については、犬に豚肉を食べさせても大丈夫?や、犬に馬肉を食べさせても大丈夫?でも詳しく紹介しています。
